• Hisami

「は」と「が」のこと – 教師の役割


さて、前回の続きです。

『げんき』の第4課は「〜が あります・います」がメインの文法項目です。

いままで「は」と「が」に触れずにきて、ここで一気に「〜が あります・います」と「〜はどこですか」を一緒に教えてしまおうという大胆なチャプターです。


私がオランダで日本語を教え始めた時に、前任の先生(オランダ人)から勧められて使った教科書は「みんなの日本語」でした。ゼロ初級ではなく、『Busy People』で半年くらい勉強してきた学習者だったので、『みん日 初級I』の後半からコースが始まりました。

「雨がふっていますか」という練習問題が出てきた時に、生徒が「いいえ、雨がふっていません」という答えたので、「それは『雨はふっていません』ですね」というと、クラス中が「なぜ、なぜ」と大騒ぎに。ほとんどが「質問文や否定文で「が」が「は」に変わるというルールを知らずにきていることに気がつきました。


ここでもう一つ気がついたことは、「雨が降っていますか」の「正しい」(とされている)答えは「いいえ、降っていません」で「いいえ、雨が降っていません」が出た場合は「雨が」はつけなくてもよろしい、ということで済ますことができるようになっていると言うことです。


なるほど、と思いました。これって、どうなのよ、と次に思いました。そこから「は」と「が」に結構こだわりながら、オランダで教え続けています。


「あなたの町に日本のレストランがありますか」

『げんき』第4課の練習に出てくる質問ですが、ここでもやはり質問文は「が」で統一されています。

答えが「はい」なら、全く問題ないのですが、「いいえ」で「私の町に日本のレストランがありません」とフルで答えたい生徒が出た場合、私は訂正せずにはいられません。

仮に「いいえ、ありません」と答えても、生徒が否定形の文を作りたい場合は、どうするのか、その点については非常に曖昧です。

文法説明のページには「テレビがありません」と「あしたは日本語のクラスがありません」という二つの否定文が紹介されていますが、これでは問題をうまく回避しているに過ぎません。触れなければいいっていうものでもないような気がするのは私だけでしょうか・・・・


お醤油を買いにお店に行ったら棚が空っぽでお醤油があるかどうかを聞く場合、ネイティブの日本人の普通の言語感覚だと「お醤油、ありますか」となり、「が」も「は」もつけないという人がほとんどでしょう。私もそうです。

じゃあ、あえて「が」か「は」をつけて聞くとしたら、どっちを使いますか?

「は」を入れるのが普通じゃないでしょうか。


ピュアな質問文として、あなたの家にコンピューターがありますか、は全く問題がないとしても、一体どんな場面でこの質問文を使うのか・・・・

コンピューター会社が消費者に向けて行っているアンケートだったらわかるけど、と思うのです。じゃなかったら、いきなりこんな質問しないよね・・・・


新しい文型を使う場面設定が非常い弱い。

これは『げんき』だけに限ったことではなく、文法積み上げ式の教科書の問題点であることは言うまでもありません。


そして、その教科書の問題点を補っていくのが教師の役目。

教科書がこう言っているから。この教科書には何も書かれていないから。そう言って、教科書頼り、教科書頼みの教え方をするのではなく、教科書をうまく利用しながら、教科書に書かれていないことこそ、教師が教える意味があるように思います。


「教科書を教える」ではなく、「教科書で(教科書を使って)教える」です。

(Not "teaching a textbook", but "teaching with a textbook")

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