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大切な出会い


数日前、元生徒のひとりと1年ぶりに会ってランチをしてきました。

オランダ料理の「クロケットサンド」(あっ、日本にもコロッケサンドってありますよね!)をいただきながら、2時間があっという間に過ぎてしまいした。


私がフリーランスになって間もなくLinkedInを通じてコンタクトしてきてくれたのがご縁で、日本語を教えることになったSamuel Leeさんです。


Samuelさんはキリスト教の牧師(Reverend:マーティン・ルーサー・キング牧師と同じ肩書き)ですが、アムステルダムの自由大学で宗教学部の学部長を勤める他、移民・難民のための私立高等教育機関を自費で設立するなど、長年に渡ってオランダ、ヨーロッパの移民・難民を助ける活動を続けてきました。この方面の専門家としてもオランダでは一目置かれていて、先日も難民クライシスを議論するTV番組に出演したところです。


昨年末にはSamuelさんの様々な活動が認められ、オランダの「Theoloog des Vaderlands 2019(2019年祖国の宗教家)」に選ばれました!


オランダでは毎年様々な分野(哲学、芸術、科学など)においてその年の最も優れた専門家が選ばれ、その翌年1年間その分野の第一人者として様々な活動を行います。それでなくても忙しいSamuelさん(それが理由で日本語のレッスンも一時中断になっています)、さらに忙しく飛び回っている様子ですが、とても生き生きとして楽しそう。私もすごく嬉しいです。


Samuelさんは今でこそオランダ人ですが、生まれはイランのタブリーズです。王政時代のイランを離れ歩いてトルコへの国境を越えたという経歴を知れば、現在移民・難民のためにSamuelさんが活動しているのも納得できます。


イランは昔でいう「ペルシャ」。長い歴史がある素晴らしい文化を持った国です。日本とのつながりも深いことは言うまでもありません。私はペルシャと聞くとなぜか血がざわざわします。これはDNAのなせるわざではないかと思っているのですが・・・・


Samuelさんの出身地であるタブリーズは、私が大好きな中世のペルシャ詩人Rumi(ルーミー)の先生だったShams(シャムス)の出身地でもあります。

Rumi、Omar Khayyam(ウマル・ハイヤーム)、Hafiz(ハーフィズ)といった中世のペルシャ詩人が大好きな日本語教師に出会うなんて、Samuelさんも思ってもいなかったようで、初対面でとても大喜びされたことを覚えています。


そしてSamuelさんの素晴らしいところは、キリスト教の牧師だけれどキリスト教にこだわらず様々な宗教、さまざまな文化に興味、理解があり、「私はキリストの道を実践する者です」とおっしゃる通り、人類をこよなく愛する本当の宗教活動家であるというところ。


宗教に凝り固まった他の牧師から批判されることもあるようです。古代ペルシャの大都市、ペルセポリス(紀元前500ころ)の遺跡で見つかった芸術品を模したレリーフを自分のオフィスに飾っていたら、オフィスにたまたま来た同僚の牧師に「異端者」と呼ばれたそうです。オフィスに置いておくと面倒なのでもらってください、と私にプレゼントしてくれました。家に持って帰って飾ることもできるのに、と言うと、ペルシャが好きな人に貰ってもらい楽しんでもらえれば、これのレリーフも幸せですから、という返事が返ってきました。


こうやって書くと、人類愛に溢れた心優しい牧師さんという印象を受けるかもしれませんが、Samuelさんは有言実行の活動家です。

先ほども少し触れたEUの難民クライシスについて少し説明しましょう。

(詳細に間違いがある場合はお許しください。)

EUとトルコの間で、シリアからの難民をEUに来させないでトルコに留めておくという取引きがあり(恐らくEU側からトルコに経済援助という名目でお金が支払われている)、それが今年期限切れになったそうです。EUからの経済援助が止まり、トルコはギリシャへの国境を開いたため、何百万人という難民がトルコからギリシャへ行こうとしたのですが、もちろんギリシャはそれをだまって受け入れるわけにはいきません。国境に軍隊を送り、ギリシャに入国しようとする難民の流入を国境上でコントロールし始めました。けれどコントロールというのは表向きで、実際は難民の衣服を奪い暴行を加えるという非人道的行為が行われているというのです。現在、何百万人という難民がトルコに戻ることもギリシャに戻ることもできず、寒空の下服を奪われ怪我を負い立ち往生しています。


出演したTV番組でSamuelさんはこうした状況を放っておくのはEU国民として恥じるべきことだ発言しました。その結果、右翼から脅迫的なメールやメッセージを受け取ったそうです。


美しいことを言うだけなら簡単です。でもそれを実行するのは簡単ではありません。何百万人もの難民がEU側に来た場合、EU諸国に住む私たちの生活が今までと同じであるはずがありません。おそらく問題も増えるでしょう。その問題を受け入れることができるかどうか・・・それを克服していけるかどうか。非常に難しい選択です。


私と会った時も、二人で現代は人間が人間としてのあり方を試されている時代だという話をしました。そして、人間が人間の心を持ち続けるために「宗教心」(宗教ではなく、見えないものを信じる力といったらいいかも知れません)は必要不可欠ではないかと思う、と私が言うと、Samuelさんから「残念ながら、多くの宗教家にはそれが欠けているんです。」という言葉が返ってきました。


日本では「宗教」というのはあってないような、ないようであるものですが、私自身は「宗教的な心」は「科学的・理論的な考え方」と同じくらい、今の世の中を生きていくためには欠かすことができない、というか、こんな時代だからこそ、それが必要とされているものではないかと思っています。


私はSamuelさんがどんな方か全く知らずに日本語を教えることになったのですが、韓国人の奥様を持つペルシャ人のSamuelさんとイギリス人の夫を持つ日本人の私がこのオランダで出会ったのも、日本的にいえば「ご縁」、キリスト教的に言えば「神のお導き」というところでしょうか。これからも大事にしたい出会いの一つです。


来年は少し落ち着くはずなので、ぜひまた日本語のレッスンを再開したいといってくれました。楽しみに待ってますよ、Samuelさん!








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