• Hisami

教科書『げんき』−「は」と「が」のこと


プライベートレッスンの生徒の一人がメッセージとともにこの写真を送ってくれたので、バーチャルお手前を一緒に楽しみました。


オランダで日本語を教えていて気がついたのは、日本語に限らず「文法」というものをよく知らない人が結構いるということ。オランダ人はネイティブ英語話者以外で世界一英語ができる人たちですが、ほとんどの人は正式に勉強しないでも英語がネイティブ並みにできるようになってしまっています。これには英語とオランダ語がよく似ているという言語学的理由から、子供の時から字幕付きの映画やTV番組を見て育っているという環境的理由までいろいろな要因があるようですが、日本とオランダの英語学習環境は全く違うことは言うまでもありません。なので、英語で subject (主語)とか adjective(形容詞) などと」言ってもわからない人が結構いたりするわけです。


今日は、英語がネイティブと同じくらいよく話せるオランダ人を相手に、私が英語を使ってどんなふうに日本語の文法を説明して、教えているかというトピックを取り上げてみます(前置きが長くなってすみません・・・汗)。


私の勤めている語学学校ではメインの教科書に『げんき』を使っています。

これが一番と思っているわけではないのですが(板野先生、The Japane Timesさん、申し訳ありません・・・)、いくつかある教科書(『みん日』『まるごと』)の中で学校側の意見も考慮して一緒に選んだのが『げんき』でした。他の言語もやはり文法積み上げ式のレッスンを行っています。


この教科書ですが、この語学学校の日本語コースや私のプライベートの生徒たちからは結構いい評価を得ています。「ちょっと難しいけれど、文法がきっちり勉強できる」というのがその理由です。


まず、教科書『げんき』について真っ先に私が思うのは、この教科書は「は」と「が」の違いに関して、できる限りはっきりと触れないように、なるべく正面から取り上げないように避けているんだなぁということ。

ようやく第8課でとてもわかりにくいやり方で「が」が導入され、その後第11課でメインの文法項目ではなく、サブの「表現ノート」で negative sentencces における「は」の使い方が初めて取り上げられています。


『みんなの日本語』も似たようなものですが、これではちょっと遅すぎると思うんです。


おそらくビギナーには最初からいっても混乱させるだけ、という配慮からだとは思うのですが、本当にそうでしょうか。私はそうは思いません。ビギナーを赤ちゃん扱いするのはかえって失礼だと思います。


私はビギナーの1回目のレッスンから「は」について話をします。

「ひさみです。日本人です。」と自己紹介をして、敢えて「私は」を使わないようにしています。そこで「どうして『わたしは』といわないのか」(生徒の多くは「文の主語には『は』をつける」というとどこかで読んだり、聞いたりしているので)と生徒から質問が来ればしめたもの。もし来なくても、こちらから「『は』はトピック・マーカーで、トピックが明白な場合は省略されるのが普通」「日本語の文には主語がないことが多い」と説明するようにしています。


そして「『は』に関しては、これだけで一冊本がかけるくらい大きい、大変な文法項目なので一度には説明できないし、今説明してもビギナーには理解しきれないのが現実。少しづつ説明していくから、今は我慢してくださいね」とお願いします。


『げんき』第1課では「今、何時ですか」と「東京は今何時ですか」が導入されます。これが2回目のレッスンです。そして、ここで主語について触れます。

先に触れたように「主語」というコンセプトがはっきりわからない人もいるので要注意です。


「今、何時ですか」と "What time is it, now?" を比べて、英語は一つの文に必ず(例外はあるとしても)主語が必要なのでEmpty 'IT' というものが必要とされるけれど、日本語は主語がなくても文法的に正しい文 ー 例えば「ひさみです」「日本人です」が作れてしまうことを説明します。ここで大事なのは「今、何時ですか」には主語はないということ。でないと「今」が主語だと思ってしまう人がいたりするので注意です。


もちろん、「じゃあ、日本語には主語は絶対にないのか」という質問が来たりしますが、慌てなくても大丈夫です。「主語とトピックが別になっている文もありますが、混乱を避けるためにそれはコースが進む中で徐々に説明します」と答えておきます。


そして「東京は今何時ですか」の導入。「トピックの『は』」をわかってもらういい機会です。ここで、前回のレッスンで「は」はトピック・マーカーだと説明したことを生徒に思い出してもらいます


「今、何時ですか」と聞かれた場合、今自分がいる国の時間だということは明白なので、誰も「どの国の時間か」ということは問題にはしません。けれど、自分がいる国以外の時間を聞く場合、その国の名前を取り立てて特に言う必要があります。その「取り立てる必要があるもの」がトピックです。ですから、この質問文では時間を知りたい国の名前がトピックになり、「は」がトピック・マーカーです。英語で言えば "As for Tokyo/Regarding Tokyo, what time is it now?" トピックはTokyo、主語はitです。それに対し、日本語の文では「東京」がトピックで、この文に主語はありません。


ここでは「ふ〜ん、なるほど、そうなのか」くらいの理解度で全然問題ありません。逆にあまり説明し過ぎないほうがいいくらいです。じゃないと、逆に墓穴を掘るか、地雷を踏むことになって自爆します 笑(私は過去に自爆した経験があるので、それ以降、説明し過ぎないことに最大限の注意を払っています)。


異論を唱える方もあるかもしれませんが、私は「トピック」と「主語」は違うという立場でレッスンを教えていきます。そして、まずは「トピック」からはじめます。これは第4課で「が」が導入されたとき(〜があります・います)に混乱をうまく解決するための準備でもあります。実は


『げんき』ではこの4課でも「は」と「が」の問題がすっかり棚上げされたまま、触れずにそっとしておきましょう、ということなのかな・・・とつい思ってしまいます。


では、第4課で何が問題なのか、次回をお楽しみに!!


















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